過背金龍と紅龍、なんで色が違うの?column

なぜ過背金龍と紅龍は同じアジアアロワナなのに体色が異なるのか?

過背金龍(High Back Golden)と紅龍(Super Red Arowana)はどちらもアジアアロワナ(Scleropages formosus)に属する同一種ですが、体色に大きな違いがあります。この違いは、以下の3つの要因に由来します。

1. 地理的分化による進化

アジアアロワナは東南アジアの異なる地域に分布しており、それぞれの環境で独立して進化しました。この地域的な隔離により、色素の発現にも違いが生まれました。

品種 原産地 体色の特徴
過背金龍 マレーシア(ブキットメラ湖など) 金属光沢のある金色の鱗
紅龍 インドネシア(カプアス川など) 全身に赤が乗る濃厚な体色

2. 色素細胞の構成の違い

アロワナの色彩は、皮膚内の色素細胞(クロマトフォア)によって決まります。

  • 紅龍:赤色色素細胞(エリスロフォア)が発達し、全身に赤色が出る
  • 過背金龍:黄色色素細胞(キサントフォア)と光反射細胞(イリドフォア)の構成により金属光沢を持つ金色に

3. ブリーディング(人工選抜)の影響

両品種は長年にわたって品種改良が進められており、表現される体色もブリーダーの選抜方針によって強化されています。

  • 過背金龍:背まで金色が上がる個体を選抜、光沢と金鱗の面積を重視
  • 紅龍:赤の濃さ・分布・バランスを重視し、より深紅の表現を目指した選抜

色彩の違いを比較表で確認

比較項目 過背金龍 紅龍
主な色素 キサントフォア(黄)+イリドフォア(反射) エリスロフォア(赤)
色の発現 側面から背中まで金が巻き上がる 顔、体、鰭まで全身赤色が広がる
発色傾向 成熟とともに背まで金が上がる 成長につれて赤味が濃くなる
改良方針 金色の面積と輝き重視 赤の濃度と全身表現重視

まとめ

過背金龍と紅龍の体色の違いは、進化、色素細胞構造、そして人の手による選抜育種の結果として現れています。どちらも異なる美しさを持ち、それぞれの魅力を最大限に引き出すには、それぞれに合った飼育と理解が必要です。

参考文献:アジアアロワナの体色に関する学術研究

  1. CKW, Alex. (2010).
    Molecular Analysis of the Breeding Biology of the Asian Arowana (Scleropages formosus).
    National University of Singapore.

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    → 各色変種(紅龍・過背金龍など)の体鱗における色素細胞(chromatophore)の構成の違いと遺伝的発現を比較分析。
  2. Mohd-Shamsudin, M. I., Fard, M. Z., Mather, P. B., Suleiman, Z., & Tan, S. G. (2011).
    Molecular characterization of relatedness among colour variants of Asian Arowana (Scleropages formosus).
    Gene, 488(1–2), 75–80.

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    → 色変種間の遺伝的類縁性を遺伝子レベルで解析し、色彩の分化が独立した進化であることを示す。