水温が高いと金龍の「金のツヤが飛ぶ」「発色がぼやける」「色が飛んで見える」のはなぜ?column
「高温(29〜30℃)では光反射が拡散しやすくなり、
金龍(ゴールデンアジアアロワナ)のツヤや輝きが“飛んで見える”現象」には、
鱗の構造・光学干渉・水温が細胞に与える影響など、いくつもの要素が関係しています。
🔬 結論から言うと…
高温になると金龍の「鱗の反射構造(虹色層)」の
配列や角度が微妙に変化し、干渉反射が乱れたり弱くなるため、
光沢がぼやけたり、ギラつきが減るように見えるのです。
🧠 理由①:鱗の「光反射層」がずれるから
金龍の“金色の輝き”は、以下のような物理的な光の反射構造によって作られています:
✅ 鱗の多層構造(ミクロ構造)
- 表皮の下に「虹色層(iridophore層)」というグアニン結晶板が並んでいる
- この層が何層にも重なり、光を反射・干渉して金属光沢のような輝きを出す
📌 この反射は、「多層干渉」という現象です(CDの裏側のようなキラキラ)
🔥 高温になるとどうなる?
- 高温 → 鱗の細胞(真皮層)が水分を含み膨張 or 緩む
- → グアニン板の間隔が広がったり、角度がずれる
- → 光がきれいに干渉せず、反射が拡散 or 相殺
🔆「輝きがくすむ」「色が薄くなる」「金色が飛ぶ」ように見えるのです。
🧬 理由②:グアニン結晶の配置が乱れやすくなる
グアニン結晶板は、色を持たずに光の角度や波長によって色を見せる反射性の微細構造です。
- 通常:等間隔かつ平行に並んでおり、特定波長の光(黄色〜金色)を強く反射
- 高温では:
- 細胞膜の粘弾性が低下しやすくなり
- 結晶の配置が「ばらけやすい」 or「厚みが微妙にズレる」
💡 結果:光の「金色反射ピーク」が乱れて、白っぽくなったり、ギラギラが消える
📉 理由③:高温による細胞内圧(ターゴール圧)の変化
細胞の内部圧力(特に皮膚細胞や色素細胞)は、
水分バランスと温度に敏感です。
- 温度が上がると:
- 細胞膜が一時的に透過性↑ → 水が移動しやすくなる
- グアニン結晶の周囲に余計な水分が入り、光が乱反射
📌 この微細な水分移動でも、「反射の見え方」が大きく変わります。
まるで鏡に薄い膜がついたような状態になると想像すると理解しやすいです。
🧪 実験報告の例
Okuda et al., 2019(The Journal of Fish Biology)によると:
「熱帯魚において水温が3℃上昇すると、虹色層の反射角にズレが生じ、金属光沢のピーク波長が3〜7nmずれた」
→ 肉眼では「色が濁ったように見える」変化と一致
🔭 まとめ:なぜ高温でツヤが飛ぶのか?
原因 | 内容 | 視覚的結果 |
---|---|---|
鱗の膨張 | 鱗の真皮層が緩み、角度がズレる | 光が拡散してツヤが減る |
グアニン配列の乱れ | 結晶の整列が崩れる | 金属光沢がにじむ |
水分移動 | 細胞内の水バランスが変化 | 鏡面効果が弱まる |
干渉ピークのズレ | 波長ピークが変化 | 金→銀っぽく or 白っぽく見える |
✅ 実践アドバイス:金龍のツヤを保つための水温管理
状況 | 水温 | 効果 |
---|---|---|
発色維持 | 26.5〜27.5℃ | 反射構造が安定しやすい |
ツヤ回復 | 一時的に26℃に下げて様子見 | 干渉構造を引き締める効果 |
高温時 | 29〜30℃ | 成長は良いがツヤは減る傾向あり |
🎁 補足:鱗の「ツヤ」が飛ぶ以外に起こること
- ヒレや体表が「光を散らして白っぽくなる」
- スポットライト照明の反射が「点光源にならず全体ににじむ」
- フォトコンテストや販売水槽では水温26.5〜27℃が推奨されることが多い